「あなたの旅を見守る方がいる」 大澤秀夫
詩編121篇3-8節、マタイ福音書2章9-16節
序 顕現日をおぼえる
教会の暦で1月6日は顕現日、東の国から占星術の学者たちが幼子イエスを訪ねた日として祝われてきました。そして、今日は顕現日が明けた最初の日曜日、今頃、学者たちは自分の国に帰る道の途上なのだろうと思います。聖書は、彼らの帰る道を大変印象深く、「別の道を通って」と記しました。
1 ヘロデの道をさけて
別の道とは、いったいどういうことでしょか。直接の文脈で言うならば、それは「ヘロデのいるエルサレムに行く道ではなく」ということです。天使が学者たちに現れて「ヘロデのところへ帰るな」と告げました。ヘロデは口では「私も行って拝もう」と言いましたが、本心は違うことを神はよく知っていたのです。天使のお告げを聞いた学者たちは、別の道を通って自分たちの国に帰って行きました。
2 イエスと共に歩む道
さて、ここで「別の道」にはもう一つ別の意味があります。主イエスにお会いした学者たちは、これまでの生き方とは違った新しい道、つまり「別の道」を歩き始めたのです。学者たちの心の中には、深く飼い葉おけに寝かされているイエスさまの姿が刻みこまれました。イエスさまが、彼らの旅の道連れになったのです。
このことは、この12月、クリスマスを祝った私たちも同じです。イエスさまと共に歩む2022年が始まったのです。
3 ヘロデによる幼子の虐殺
学者たちが帰ってこないことに気づいたヘロデは、激しく怒りました。16節以下に描かれているのは、いつの時代にも、どこにでもある、権力を持っている人々の常とう手段です。恐怖と暴力で貧しい人々を押しつぶす、自分中心の生き方がヘロデのやり方でした。学者たちからの情報に基づいて、ベツレヘム周辺の幼子をヘロデは一人残らず殺してしまいます。クリスマスの背後に幼子の虐殺を見ている、聖書の現実描写、リアルさに私たちは驚くばかりです。これこそ、学者たちが避けた古い道、私たちが捨てなければならない古い道です。
4 ヨセフ、マリアとイエスを守って、エジプトに逃れる
別の道で帰るように学者たちに告げた天使は、ヨセフにも現れて言いました。「子どもとその母親を連れてエジプトに逃げなさい。」ヨセフはマリアと幼子を連れて、エジプトに逃れました。ヘロデが死んだ後、ヨセフは幼子イエスとマリアを連れて、イスラエルに帰り、ナザレに落ち着きます。しかし、イエスの旅は続きます。およそ30年後主イエスは私たちを救うため、まったく新しい別の道を歩き始めました。私たちをいつも見守ってくださる神を信じて、私たちは主イエスの道を進んでまいりましょう。